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過去の開明通信で「いじめ」について書かれたものが2つありました。


2012年7月号より
いじめについて
いじめられている生徒さんは、勇気を出して親に話してください。
今は、つまらない学校生活かもしれませんが、人生は学校生活だけではありません。
これから楽しいことがたくさんあります。必ずあります。
勇気を出して、親に話してください。

親は、「親に話さざるを得ない」ほどのいじめが行われていると受け止め、
わが子を責めないで下さい。
いじめられている子は、「仕返しが怖い」、
「親にいじめられるような子だと思われたくない」(親に心配をかけたくない)
などの理由から、少々のいじめでは親に話しをしません。
我慢できるところまで我慢してしまいます。

次に、親は学校に報告してください。
その際、担任だけに話すのはだめです。
電話ではなく、校長、教頭、担任の目の前で訴えてください。

担任の先生だけの報告ですと、その先生に教育力がない場合、
まるで意味を持ちません。悪化する場合もあります。
電話だけの場合も、対応が遅れる可能性が高いので、
親が学校まで出向くことで「事の重大性」を示すのです。

いじめの程度によっては、教育委員会、警察へ連絡してください。
いじめる側がいやがるのは、「事が大きくなること」です。
しかし、「事を大きく」しないといじめはなくならない可能性があります。
内々で処理するケースが、のちに「仕返し」を受けやすいのです。

「いじめ」はいつの時代にも起こります。
原因は様々ですが、教師の不勉強が一番大きな原因だと私は思っています。
この文章を読んでいるご父兄の方は、お子さんの担任の先生にぜひ尋ねてください。
「先生は、いじめについて、どのような教育書をお読みですか」と。
題名と著者がスラスラ言える先生は、勉強熱心な先生です。
1冊の題名も言えず、「昔、読んだんですが題名までは・・・」と
ごまかす先生は、不勉強な先生です。
「いじめの構造を破壊せよ」(向山洋一著)がオススメです。



2003年5月号 より
どの脳が傷つくのか?

子どもの命が奪われる可能性があるということから、
子どもが自らの命を絶つ可能性があるということから、“いじめ”は最大級の悲劇です。
にもかかわらず、深刻な“いじめ”は発生し続けています。
今回は、“いじめ”について書きます。

“いじめ”は大事件であり、緊急事態です。いつ、だれがそうなるか分かりません。
人間の脳は、大きくわけて“3つの脳”でできているそうです。
能幹(のうかん)と旧皮質と新皮質です。
能幹は「ヘビの脳」とも言われ、睡眠、呼吸、食欲など、
生きてゆく上で欠くことのできない働きを担っています。

旧皮質は哺乳類が持っている脳で、「ネコの脳」とも言われます。
喜び、悲しみ、怒りといった感情を左右します。

新皮質は「人間の脳」とも言われ、
言葉や知識など、人間の知的活動を担っています。



では、“いじめ”で傷がつくのは、「ヘビの脳」か「ネコの脳」か、
それとも「人間の脳」なのでしょうか?
“いじめ”は脳幹(ヘビの脳)を傷つけます。
脳の根幹が傷つくのですから、本能が攻撃されていることになります。
これを“人間の脳”(理性)で押さえ込もうとすると、
人格が壊れる恐れさえ出てくるのです。(精神分裂症など)
ですから、ひどいいじめにあっている子に「我慢して学校に行きなさい」は、
あまりにきつい一言です。
ひどいいじめにあっている子に「いじめられるほうにも原因があるのです」と
言うのは、さらにその子の心を傷つけます。

原因などは、二の次、三の次で、まず、
いじめられている子の心を救うのが先決です。
誰にも相談できず、ひとりだけで苦しみ、
あげく自らの命を絶つということさえあるからです。
このような悲劇は、あってはなりません。
その子の苦しみ、さらに、残された家族の悲しみは、想像を絶します。
悲劇は“いじめられた”側だけでは終わりません。
いじめた子が、少年院に送られることもあります。
いじめられた子が自殺でもした場合、
いじめた子の父親は、今の職場にいるのが困難になります。
学校でもうわさはすぐに広がり、
兄弟、姉妹の学校生活にも大きな影響を及ぼします。
引越しを考えなければならないかも知れません。
いじめた子の脳裏にも、家族の脳裏にも決して消えることのない記憶が
一生ついてまわります。

私は以前、いじめが原因で不登校になった子を指導したことがあります。
初めて出会ったときには、不信な目で見られ、
授業ができるようになるまでに1ヶ月ほどかかりました。

ほとんど中学には行ってなかったので、1年の内容からです。
半年ほどたったところで、中学の卒業式でした。卒業式には出ていません。
卒業後は、仙台の大検予備校に通います。
時は流れ、その年の秋。その子は自分の手首をカッターで切ります。
思うように勉強が進められない、人とうまくコミュニケーションがとれない、
意志が弱い、自分はダメだ、自分はダメだ、と思うようになり、
生きる希望をなくしたのだそうです。
大事には至らなかったものの、精神科への入院を余儀なくされ、
何種類もの薬を飲むようになります。
そして、再び私と授業をすることになりました。
鬱(うつ)状態のときもあり、「死にたい」と言われたこともあります。
何と言葉をかけたらいいのか分からず、励ます言葉を知らない自分にいらだちました。
幸い、徐々に、薬を飲まなくてもいいほど元気になりました。
将来の目標もでき、勉強への意欲もわいてきました。
“「死にたい」と言っていた自分が信じられない”、と言うほど、
精神的にも強くなります。
月曜から金曜まで毎日授業をしました。英語も数学も3年内容を終え、
1日に10時間の勉強にも耐えられるようになります。
お父さんと口げんかもできるようになりました。
その子は、見事志望校に合格しました。
しかし、いじめによって人生を変えられたのは事実です。
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